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『島の色 静かな声』上映会×すごいニッポン未来会議

上映会を終えた佐藤翼くんから、報告メールをいただいたので転記します。この映画を大好きになってくれて、今だからこそたくさんの人とシェアしたいと言う佐藤くんの気持ち、とても嬉しいです。皆様も応援して下さいね。これからもどんどん上映会をしてもらいます。

「こんばんは。先程はお忙しいところお電話失礼しました。
上映料を旅費にさせて頂けるということで、感謝してもしきれない思いで一杯です。本当にありがとうございます。

遅くなりましたが上映会の報告です。

4月24日(日)福岡で行われた『島の色 静かな声』上映会×「すごいニッポン」未来会議は、参加者が2名(社会人女性と熊本の女子大生+主催2名)だったので、かなり深い話ができました。

流れは、チェックイン→映画上映→感想シェア→未来会議「7代先の日本に残したいもの」→そして、イマココ、の予定でしたが、人数が少なかったこともあり、急遽予定を変更し、、チェックインのながれで、「繋がる」とはどういうこと?についてダイアローグしました。
ここでは、繋がるとは、人との出会いだとか、仲間、ゆいまーる等の意見がでました。

その後映画を上映し、感想シェアをしました。

その、ダイアローグの中で、自分が一番印象深かったのは、都会の電車の中の描写で映っているたくさんの人がいるのに関係が希薄化しているように感じたというものでした。

最初に、繋がりについてダイアローグしたので、かなり興味深く、印象に残っているのですが、西表島の「いちゃりばちょーでー」と違い過ぎる、都会の表情に衝撃をうけました。

震災を経験し、改めて日常を振り返ったとき、イマココを大切に生きれる人間になりたいと思いました。

報告というよりは、感想みたいになってしまいましたが、足りない部分等ありましたら、ご指導ください。

ありがとうございます!

佐藤 翼


役所広司/俳優

同じ日本とは思えない美しい島で、静かに、正直に生きている人々から、何が大切で、何が豊かなのかが、優しく、静かに伝わってくる。
染織家の石垣さんの語る「ゴミになるような物なら作らない方がいい」という言葉に深く感動しました。



大竹昭子/文筆家

私はこの映画を合計3回見たが、見るたびに映像が身体に染み込んでくるのを感じる。最初はゆっくり感じられたカメラワークが、回を重ねるごとにそれ自身の意味を持ち出す。
島の人たちは都会の私たちとは違うリズムで生活している。時間の流れに合わせるような、寄り添うような、実に不思議な振る舞いをみせるが、ゆっくりしたカメラワークはそのリズムをなぞっているかのようだ。
冒頭に、石垣昭子さんが色染めについて語るシーンがある。最初の頃はいろんな植物を使っていろんな色を出していたけれど、この土地らしい色を探るうちに、島に自生している紅露で染めるのがいちばんうまく染まるとわかってきた、それも紅露が採れる時期に一気に染めるのが、失敗がなくてうまくいくと。
天然自然の法則から引き出された合理性は、人間の事情にせっつかれた合理性とはちがう。波の音、風音、機の音、森のざわめき、歌声、しゃべり声……。丹念に収集された音と映像の重なりが、知らぬ間に観る者を島の時空に引き込んでいく。



小阪 淳/美術家

圧倒的な「自然」。「見えるもの」と「見えないもの」の狭間で暮らす人々。
その中に異様な風景が挿入されている。
リゾート開発の果てに打ち捨てられた、宇那利崎の廃墟だ。
もしも私が島で暮らすならば、住まいはきっとあの廃墟だろう。
皮肉でも自虐でもない。人工物が風化していく中で生み出されたディテールが、
都会の生活しか知らない私と「自然」をつないでくれるような気がするからだ。
映像を通して島から届く「何か」が大きいほど、私の心は島から遠ざかる。
私の体が、もはや「自然」に戻れないことは判ってしまった。
この映像詩は、私に帰る場所がないことを明らかにし、私が生きるために、
新たな「世界の愛し方」が必要であることを教えてくれる。
そして、美しさと醜さのむこうにある「見えないもの」を探る旅へ、
私をいざなっている。



熊倉敬聡/大学教授

茂木の世界は微細な事件で満ちている。水が風が布が葉が煙が炎が影がざわめきゆらぎたゆたいしたたりぬめりはぜる。世界は微細な神々で満ちている。
刀。女たちは芭蕉を裂き、男たちは犬を断つ。芭蕉を煮、犬を煮る。布を纏い、鍋を喰らう。自然を切断し加工し頂戴する技術。伝承。織物、料理……。映画もまた。
人間は生きるために微細な神々を頂く。だから一本一本一粒一粒一滴一滴が大切。織りながら食べながら飲みながら唄いながら神々に手を合わせる。頂きます。
ビニールがコンクリートが神々を窒息させ蹂躙する。近代文明が資本主義が自然を破壊し消尽する。一本一本紡ぎ染め織る技=「本来の仕事」ははたしてそれに抵抗できるのか?一人でも多くが「本来の仕事」につき、一人でも多くの「本来の仕事」人たちが、共感し共働し、“もう一つの”生き方、“もう一つの”文明の在り方を共に作り出すことを、私は願う。
この『島の色 静かな声』のように。



ホンマタカシ/写真家

水の音 闇夜に月 雲が横切る ホホっと鳥らしき鳴き声 蝋燭を吹き消す 織り機のアップ 夜明けのような波が打ち寄せる 暗転 織られた布に木漏れ日 枝にほしてある 青空からパンダウン 沖縄三味線 タイトル「島の声 静かな声」 

ボクはビクトル・エリセの「マルメロの陽光」を観て自由が丘のトンカツ屋の老オヤジのドキュメンタリーを撮りたいと思った。オヤジが朝早く起きるときから自分の身支度、朝食、歩いて仕事場、掃除、下準備、一服、最初のお客、トンカツを揚げる手順を丁寧に撮りたいと思った。最後のお客が帰り、あと片付けをする、ダレも居なくなった店で一服。歩いて帰宅。そして就寝まで。イツも変わらないその職人の日々を撮りたいと思った。撮る価値があると思った。
でも撮らなかった。

この茂木さんの映画には島で当たり前のように色を染め布を織る人達の暮らしが撮影されている。丁寧だと思った。良いなと思った。

もっともっとこういう映画が増えるといいと思った。